コラムコラム

第18回 Fullmoon Kalapana

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以前、ハワイ島南東に位置するプナ・コーストのカラパナに美しいブラックサンドビーチがあった。
海に流れ込んだ溶岩が長年波にさらされ出来上がった黒砂はサラサラしていてとても気持ち良い感触だった。
このビーチは南から吹くコナ・ウインドによってできたうねりが美しい波となって海岸にやって来るのでサーフィンのポイントとしても有名だった。

しかし1990年9月キラウエア火山の噴火でこのカラパナ、カイム地区に溶岩が流れ込みこの美しい黒砂のビーチは消滅してしまった。
ビーチの前にあったカラパナ・ストアだけは奇跡的に溶岩から逃れ、今でもこの場所で営業している。溶岩の流失で海岸線は遥か先になってしまった様子は、大自然の恐ろしさを思い知る光景だ。

Fullmoon Kalapanaはフルムーンの夜に大波がやってきたカラパナのブラックサンドビーチを描いた作品だ。
実は実際にカラパナでこの様なフルムーンの光景を見たことはなく想像で描いたのだが、そのきっかけは片岡義男氏の小説「波乗りの島の」の中の一編‘アイランド・スタイル’を読んだ時に浮かんだイメージだった。

小説の中では場所の特定はしていないが黒砂海岸と夜のサーフィンの様子が克明に描写され、読み進んでいくうちに月の光に輝く波飛沫や海面の輝く様子が自らその場所にいるかのような錯覚に陥ってしまっていた。そして常に頭の中にこの絵の様なシーンが浮かんでいたので違和感なくFullmoon Kalapanaが描けたのだ。

小説では火山の噴火で美しい黒砂海岸が消滅してしまうくくりになっている。
1970年代に書かれたのだが、何か1990年の出来事を予言していたような内容だ。
今でも時々この場所を訪れると、地球は生きているということをはっきりと実感させてくれる。
溶岩が流れ込んで20年近く経つと、固まった溶岩の間からシダやオヒアなどが芽を出し育っている光景を目にすることができる。大自然の生命力を肌で感じてしまう場所だ。
普段都会で生活しているとこのように肌で地球を感じることがない。
だから僕はハワイ島に何か特別な感覚をいつも抱いている。
まだまだ描きたい風景が沢山存在している島だ。