コラムコラム

第25回 ブルーハナムーン

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ハナでフルムーンを見たい!

その想いがようやく実現できることになり、カレンダーの月齢表示を見てフルムーンにスケジュールを合わせ、マウイ島のハナへ行くことにした。ハナのフルムーンへの想いは1980年代後半にマウイ島在住の有名なマリン・アーティストが描いた‘Blue Hana Moon’というタイトルの絵を見たのがきっかけだった。その絵にはハワイアンの女性、月明かりに透き通る大きな波、そして幻想的なハナのフルムーンが描かれていて、僕はその絵に惹き込まれていくような例えようのない美しさに惹かれてしまい、しばらくの間絵の前に釘付けになってしまったことを覚えている。 冬のある朝、嵐のような天候のマウイ島カフルイ空港に降り立った僕は、レンターカーをピックアップして、どしゃ降りの雨の中、ハナ・ハイウェイを3時間かけてようやくホテル・ハナ・マウイに到着した。 ハナで唯一のホテル・ハナ・マウイは世界でも屈指のリゾートホテルとして認知されツーリストの憧れの的となっている。それはこのホテルがホスピタリティーに溢れているからだ。僕はこのホテルの売りでもあるシー・ランチ・コテージに予約を入れておいた。オールド・ハワイアン・スタイルのコテージは天井が高く、床はフローリングで、テレビもラジオもない。ハワイアン・キルトのベッドカバーにバンブーの家具。窓からの涼しい海風と天井のファンがあるのでもちろんクーラーもない。オーシャン・フロントの広いラナイのプライベート・ジャグジーで星を見ながらシャンパンを飲み至福のときを過す。これが以前から計画していたここでの過ごし方だった。 ホテルのラウンジでローカルバンドのハワイアンミュージックを聴きながら飲んだマルガリータとラナイのジャグジーで飲んだシャンパンの酔いがまわってきたらしく、明日の天気に期待し早めにベッドに入った。耳元には波音だけが聞こえていた。 鳥の声で目覚めた翌朝は昨日とうって変わって雲ひとつない青天だった。

今夜のフルムーンは期待できそうだ!ハナはマウイ島の東海岸に位置している為、月は水平線から昇ってくる。今日はムーン・ライズの瞬間を見ようと思いディナーの予約を遅めにし、シー・ランチ・コテージのラナイで夕方6時頃から待機していた。 冬のこの時間はすでに薄暗く太陽も後方のハレアカラの陰に入ってその残光がハナの町を紫色の幻想的な色に変えていた。 やがて水平線が明るくなり薄いオレンジ色に輝くフルムーンが顔を出した。水平線から昇る月を見たのは生まれて初めてだった。 まるで生き物のように月の内部はゆらゆらと揺れながら海の上に上ってきた。

しばらくの間、この感動の時間に身をゆだねていた。

辺りはすでに闇に包まれているが、僕の目には空の色は黒ではなく藍色に映っていた。海に映った月はきらきらとゆれて輝き、人工的なネオンより明るかった。街灯もないハナの町も月明かりでぼんやりと見えている。月の明かりを浴びている感覚がわかる。フルムーンのパワーなのだろうか。ヤシの葉は夜の涼しい貿易風にカサカサと音をたて月の光を浴びて揺れている。これがかつて絵の中で見たハナの月だ。 この目に焼きついた光景は永遠の記憶となり、これから僕は何枚ものハナのフルムーンの絵を描いていくことだろう。

◆ヒロクメさんのHPはこちら
http://www.hilokume.jp