コラムコラム

第28回 マウイ・ムーン

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マウイ島で見るフルムーンはどこで見るよりも大きく美しいと思う。

僕が絵を描くきっかけとなったのもラハイナで見たフルムーンだ。

シルエットになった山陰から登ってきたフルムーンはナイターの照明と見間違えるほど大きく、まるで自ら光を放っているかのように明るかった。 このときの感動は今でも鮮明に心に焼き付いている。

僕同様にマウイのフルムーンの美しさに魅了された人は多いと思う。 ラハイナのフロントストリートにはギャラリーが多く、地元のアーティストによるマウイのフルムーンを描いた作品も多く見られる。その作品のどれをとっても、マウイの美しいフルムーンに対して作家の思い入れがあるのは、絵を見ればよくわかる。

ハワイアンミュージックの中でもマウイの月をテーマにした曲はいくつも歌われている。 中でもMyra Englishのスロー・バラード「Maui Moon」はロマンティックで、僕の大好きな曲だ。Keola Beamerの歌う「Sweet Maui Moon’」は美しいメロディを持った甘いバラード。有名な「Lahaina Luna」の歌詞にもマウイの月明かりが出てくる。

何年か前に、フルムーンの日にラハイナを訪れたとき、運良く‘ムーンボウ’(月夜に出る虹)をこの目で見た。

ラハイナの後方の山から明るく、大きなフルムーンが昇ってきたとき、ふとラハイナ沖を振り返って見ると、海上に虹のようなものがかかっているのが見えた。これが以前から話でしか聞いたことのなかったムーンボウだとすぐにわかった。

闇夜にうっすらと映し出されるムーンボウは幻想的で美しかった。やがてムーンボウはダブル・ムーンボウへと変化し、それからどの位の時間現れていたのだろうか、思いがけずムーンボウを目撃できた事実に心を動かされ、しばらく声もなく見ていた。

ハワイでは昔から月夜の虹を見ると幸せになれる、と言い伝えられている。実際、僕は少し幸せな気持ちになった。気象条件が揃わないと見ることができないムーンボウだがその中でもマウイ島のラハイナはムーンボウが比較的よく見られる場所だ。ラハイナで見るフルムーンの美しさの証だろう。

フルムーンの光はくっきりと椰子の陰を作り出し、海面も波間の様子をはっきりと映し出す。街灯がなくても夜の散歩ができるくらい明るい。

僕は光を浴びている間、それが何かは言葉では説明できないのだが、体に何か特別なものを感じた。そしてヨーロッパで言い伝えられているフルムーンの光を浴びて狼に変身する「狼男」のことを思い出した。 大潮のフルムーンの日に産卵をする珊瑚や海亀、カニなど、色々な動物もフルムーンのパワーによって導かれ行動している。日本でも昔からフルムーンに対して特別な意識を持っていた。フルムーンの日に月に帰って行ったかぐや姫の『竹取物語』や万葉集をはじめ、短歌などでも月を題材に歌われているものがある。古代から人々は月の特別なパワーというものをよく知っていたのだろう。

僕が絵を描き始めたのもマウイのフルムーンのパワーのせいかも知れないと思っている。

◆ヒロクメさんのHPはこちら
http://www.hilokume.jp