コラムコラム

第31回 ギャビー

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僕が絵をかき始めた頃、キャンバスに向かっている時はいつもギャビー・パヒヌイのCDをリピートにして聴いていた。ギャビーのリラックスした歌は、僕が頭に浮かべていた‘古き良きハワイの絵’のイメージにマッチしていて、とても落ち着いた気分になるような空間をつくってくれたのだ。

ギャビー・パヒヌイ(Gabby Pahinui)という名前を知ったのは、多くの人がそうであるかと思うが1976年にリリースされたライ・クーダーの‘チキン・スキン・ミュージック’(Ghicken Skin Music)というアルバムだった。ギャビーの親友のギタリスト、アタ・アイザックスと一緒に2曲参加している。当時購入したLPレコードの内袋にはリラックスした雰囲気が、とても良く伝わってくるレコーディング風景の写真が何枚か載っている。2人共とても楽しそうで心底音楽を楽しんでいるかの様だ。ギャビーがスチール・ギターでアタがスラック・キー・ギターを弾いていて、僕は今まで聴いたことのない土臭く、ハワイのローカル風景を感じさせてくれるギャビーのサウンドがすっかり気に入ってしまった。
以降ギャビー・パヒヌイの音楽との長い付き合いが始まった。

1979年の雑誌『ポパイ』の‘ダ・カイン・サウンド’特集では色々とギャビーの事を勉強させてもらった。ハワイのお土産でもらった‘Da Kine’という本は70年代のギャビーを中心としたハワイの音楽事情も教えてくれた。ギャビーの珍しい写真も掲載されている。僕は国内版も含めLPレコードも何枚も手に入れた。
とくに‘in HAWAII The Story Starts’というコンピレーションのアルバムに僕は古き良きハワイの雰囲気を感じ取り、しばらくはこのアルバムばかり聴いていた時期もある。アンディ・カミングスの‘Waikiki’やジャジーな‘Pikake’、チャールズ・ミラーの‘Mauna Kea’、ギャビー・パヒヌイの‘Ka Makani Kaili Aloha’など古きよきハワイの歌声が納められていた。そしてアルバムのラストを飾ったのはギャビーが歌うハワイアン・ウエディング・ソング‘Ke Kali Nei Au’だった。僕にとってまさにハワイアン・ベスト・アルバムだ。

かなり前の話だがホノルルのアンティーク・ショップで古いLPレコードを数多く扱っている店があった。そこで1970年にリリースされた‘サンズ・オブ・ハワイ’(Sons of Hawaii)のボックス・レコードを何組も見つけ驚いた事がある。ボックスの中は、LPレコードとサンズ・オブ・ハワイのメンバーのプロフィール本と‘On Hawaiian Folk Music’という本が収められていた。

レコードの時代が終わりCDの時代になってもギャビー・パヒヌイのアルバムはほとんどCD化されているのが嬉しい。
また、見られるとは思っていなかったギャビーの映像もビデオで発売された。
タイトルは‘Gabby Pahinui Family & Friends / The Pahinui Bros.’で、ギャビーや彼の息子(シリル、ブラ、マーティン)や親友のアタ・アイザックス、ピーター・ムーン、パラニ・ヴォーンなど、ワイマナロにあるギャビーの自宅の庭でセッションしている様子を映している。映像からは楽しく、リラックスした様子が伝わってきた。これが本当のハワイのソウル・ミュージックなのだと思った。この様子は僕が繰り返し読んだ片岡義男の短編小説‘アイランド・スタイル’で表現されていたシーンだった。小説の中ではフルムーンの明かりの下で行なわれたカニカピラ(セッション)の様子がとてもロマンティックに表現されていた。

僕は今までに色々なハワイアン・ミュージックを聴いて好きになってきたが、やはり最後はギャビー・パヒヌイに戻るのだ。カピオラニ・パークの野外音楽堂ワイキキ・シェルのエントランスにあるギャビー・パヒヌイの銅像は発展し続けるハワイアン・ミュージックをこれからも見守り続けていくのだろうと思う。
今日もまたギャビーの音に包まれる僕は、オールド・ハワイの世界へと導かれて行く。

◆ヒロクメさんのHPはこちら
http://www.hilokume.jp