コラムコラム

第5回 Moonlight Cove

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波静かな満月の夜。南太平洋のある島の海辺の集落にたたずむピンク・ジンジャーを持ったロコガール。
上ってきた月は信じられないくらい大きくて明るい。そして無数の星の輝きと流れ星。アウトリガー・カヌーにかけられたピンクのプルメリアのレイ。
バード・オブ・パラダイスにレッド・プルメリア。
ヤシの木に囲まれたハレ(家)からはククイの油で照らされた室内の灯りがラグーンに映っている。月の明るさでトーチ(松明)を焚かなくても漁ができるほどだ。
ハワイは僕に多くのインスピレーションを与えてくれた。

‘Moonlight Cove’(月明かりの入り江)は僕の理想郷で僕自身がこの時刻にこの場所にいたいという‘夢’を絵にしたものだ。
自分の作品としては意外に大きく横幅120センチのキャンバスに描いた。
実はこの作品を描くときのモデルとなった場所がある。そこはハワイ島西海岸のフアラライ山の麓の海岸線にある‘コナ・ビレッジ’というホテルなのだ。
このホテルの部屋は全てコテージで南太平洋のポリネシアやメラネシアの島々の家を再現している。どこか南の島にタイムスリップして迷い込んだような場所だ。
よく晴れた日には遠くマウイ島のハレアカラ火山が見え、冬になると遠くアラスカから出産と子育てのためザトウクジラもやってくる隠れ家的ホテルだ。もちろん敷地内は他のホテルと違い宿泊者しか立ち入ることはできないので静かにリゾートライフを過ごすことができる。
タヒチなど南太平洋へ行けばコナ・ビレッジのような雰囲気のホテルばかりなのだが現在ハワイではここだけである。

ハワイの古いポストカードや写真をみるとグラスシャック造りのホテルなどが多く古き良きハワイ(南太平洋)の雰囲気があったと思う。
現在のハワイは開発が急ピッチで進み、少し前まで残っていた古き良きハワイの面影もほとんど無くなってしまっている。特にワイキキの開発の進み方が早くここ数年の変わり方は目を見張るばかりだ。
ヒルトン・ラグーンのワイキキアンの取り壊しに始まりインターナショナルマーケットプレイスの改装、ルワーズSt.の開発。そしてホノルルのダウンタウン、チャイナタウンの開発など……挙げていたらきりがないほどだ。
僕はこれからも、もう見ることが出来ない自分の好きな古き良きハワイのイメージを描いていきたいと思う。
それは僕にとっての二次元の‘楽園’(パラダイス)だからだ。