コラムコラム

第14回 Princess Kaiulani

このエントリーをはてなブックマークに追加

Lei No Ka’iulaniという美しいバラードがある。
波静かな月夜のワイキキの浜辺にいるような感じになる歌だ。
特にピータームーン・バンドのバージョンがピーターのスラック・キー・ギターの鳴かせるフレーズが雰囲気を盛り上げ聞き惚れてしまう。

この曲のタイトル‘レイ・ノ・カイウラニ’のカイウラニはハワイ王朝末期の激動の時代に生き、ハワイ王国の消滅を眼のあたりにして心を痛めていた。そして23歳の若さでこの世を去った悲劇の王女として語り継がれている。
カイウラニ王女は1875年スコットランド人のアーチボルト・クレッグホンとリケリケ王女の子としてホノルルで誕生した。
‘Victoria Kawekiu Lunalilo Kalaninuiahilapalapa Kaiulani’というとても長い名前がつけられている。これがカイウラニ王女の正式な呼び名だ。

現在‘Kaiulani’の名はワイキキでは通りやホテルの名前になっている。
プリンセス・カイウラニ・ホテルはカイウラニ王女が幼少の頃過ごしたアイナ・ハウ(ハワイ語で涼しい土地)という場所に建っていて館内にはカイウラニの肖像画が飾られている。その肖像画を見ていると、どの顔もどこか寂しげな視線をこちらにむけている。こんなに発展を遂げたワイキキの喧騒をよろこんでいるのか、古き良き時代のハワイとのギャップを悲しんでいるのか。僕には後者ように思えるのだが。

‘Princess Kaiulani’と題したイラストは2008年アラニ山内氏のアルバム『Na Mele O Hawaii Alani~Vol.2 ハワイ王朝時代のハワイ音楽~』のジャケットのために描いたもので
カイウラニ王女のバックにはハワイ王朝の象徴でもあるイオラニ宮殿と彼女のペットでもあったピカケ(孔雀)や庭園に咲いていたジャスミン、プルメリア、ジンジャー等を描いてみた。
以前から神秘的な美しさを持っているように思っていたカイウラニ王女を描いてみたかったので、この依頼がよいきっかけになったと思っている。

そして今、頭に浮かんでいる描きたい絵がある。
タイトルは‘Lei No Kaiulani’
あの名曲を聴きながら思い浮かべた月夜のワイキキビーチにたたずむカイウラニの絵を。