コラムコラム

第19回 Pacifica

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1980年代初頭、湘南でいつも波乗りをやっていたころオアフ島北海岸一帯を示す‘ノースショア’という言葉に対して憧れを抱いていた。

当時はサーフィン誌やポパイ、ブルータスなどの雑誌でノースショアは頻繁に取り上げられていて、記事を読んでいくうちに僕の頭の中にはどんどん憧れのイメージは膨らんでいったのだった。

‘メニークラシック・モーメンツ’や‘フリーライド’など数々のサーフィン映画などの映像を見ることも僕にとってノースショアを知るための手段だった。
そして自分なりに‘ノースショア’という世界感を頭の中に憧れとともに描いていたのだった。

その後、実際に訪れたノースショアは頭の中で思い描いていたものを忘れさせてしまう程パワーのある場所で僕はすっかり虜になってしまった。

同じオアフ島でもホノルルとは正反対の古き良きハワイを感じさせてくれるのどかな雰囲気で日系人の名前の残るジェネラルストアー、食堂、古い看板、サーフボードを積んだ古い車、そして美しいビーチと波などそのどれをとってもノースショアは新鮮な感動を与えてくれ、いつ訪れても帰ってきたという懐かしい感覚を与えてくれ、ここに通うことは僕にとって日常といっていいくらい居心地のよい場所になっていた。


このパシフィカ(Pacifica)は80年代当時頭の中に描いていた憧れだったノースショアのイメージを絵にしてみた1枚だ。

チューブ波の彼方にはカエナ・ポイント沖に沈もうとしている太陽。
架空のサーフショップ‘Pacifica’には70年代のショートボードが並んでいる。

外のベンチにはウクレレで古いハワイアンソングを奏でているロコガール。

その時波乗りを終えた一人のサーファーがワ-ゲンバスで店にやってきた。
これからこの店には色々な人達が集まってくるだろうというゆったりと時間の流れる‘アフターサーフ’をテーマにこれから始まる物語を感じていただけたら嬉しいと思う。

僕はこれからもパワーをもらうためにノースショアには通い続けるだろう。