コラムコラム

第33回 Island Style~Surf~

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コラム6話で紹介した片岡義男氏の短編小説集「波乗りの島」をイメージして描いた‘アイランドスタイル’では、音楽の話をもとに描いたが、実はその小説の半分は波乗りの話だ。
満月の夜の波乗りのシーンが何ページにもわたって細かく描写されている。
黒砂海岸の沖で波待ちをしている時、沖から見える海岸沿いの町から山にかけての風景。遠くの岬までの距離感、そして水平線から満月が昇ってくる様子はまるで自分がその場所にいるかのような感覚になり引き込まれていく。
波が砕ける瞬間、満月が波に透けて映るシーンもたまらなく好きで、やがてチューブの中をライディングしている様子はスローモーションで自身がチューブの中をくぐっている様な、夢の中の出来事に思えてくる。
この波の音まで聞こえてきそうな文章は幾度となく読み返したものだった。

この小説の舞台はハワイのどこなのか色々想像してみた。切り立った山々はカウアイ島ナパリコーストの様でもあり、谷間の風景はマウイ島のイアオ渓谷にも思える。
しかし黒砂海岸の存在や日系人町はやはりハワイ島なのではとも思える。
火山が噴火して町が消えてしまうという出来事はやはり舞台はハワイ島キラウエア火山周辺だろうとハワイ島南側に位置するプナ・コースト周辺の地図も見ながら想像して読んでいるのもとても楽しい小説だ。

‘Island Style’と6話と同じタイトルをつけた今回の絵はフルムーンの夜の波乗りに挑むサーファーを想像して描いてみた。
これから大波のチューブのなかに入る精神状態はどのようなものなのだろうかと。
どれだけの集中力なのだろうかなどと考えながら筆を進めていった。
この小説は僕にとってまだまだ作品になるイメージがたくさんある。
第3弾、4弾……と新しい‘Island Style’を描こうと決めている。