コラムコラム

第4回 「フムフムヌクヌクアプアア」

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ハワイ好きの人ならフムフムヌクヌクアプアア『Humuhumu-nukunuku-a-pua’a』という長い名前をどこかで聞いたことがあると思う。 ハワイアン・ミュージックの有名な曲‘My Little Grass Shack’の歌詞で印象的な部分に登場する名前だ。

フムフムヌクヌクアプアアというハワイアン・ネームを持つトロピカル・フィッシュは「豚のような口(鼻)」という意味を持ち、とても愛嬌のある顔をしていて、1984年にはハワイの州魚に選ばれ(非公式だが)、まさしくハワイの顔となったのだ。日本では学名をモンガラカワハギ、英名は‘Picasso Triggerfish’と呼びハワイ各島のリーフ内の浅瀬でよく見られる。

僕はいつもマウイ島の浅いリーフ内でフムフムヌクヌクアプアアに出会いたくてシュノーケルを付け探しているのだが、非常に用心深い魚で動きが素早く、なかなかじっくりと観察することが出来ず、写真を撮るのも一苦労だ。 他にもハワイには固有種はもちろん、ハワイ語の名前の付いたユニークでカラフルな熱帯魚がたくさんいて、ダイビング用のリーフ・フィッシュ・カタログを見ながら、のんびり水中散歩をするのはとても楽しい。

海中で鮮やかな黄色がひと際目を引き、離れていてもすぐに見つけることが出来るのがハワイ固有種のレモンシード・バタフライ・フィッシュの‘ラウ・ウィリウィリ’(Lau Wiliwili)だ。真っ黒いボディに鮮やかなオレンジが映える‘パクイクイ’(Paku’iku’I)は群れで泳いでいることが多い。 とがった長い口が特徴の‘ラウ・ウィリウィリヌクヌクオイオイ’(Lau Wiliwili-nukunuku-oioi)。アロハ・シャツのブランド名や柄にもなっている‘キヒキヒ’(Kihikihi)は誰でも知っている熱帯魚だ。 うつぼは‘プヒ’(Puhi)といい、ハワイアンの伝説に登場するうなぎと同じ名前だ。

ハワイのシーフード・レストランではキハダマグロは‘アヒ’(Ahi)、ヒメダイは‘オパカパカ’(Opakapaka)、サワラは‘オノ’(Ono)、メカジキは‘アウ’(Au)などのように魚がハワイ語のままメニューに記載されている。プレート・ランチやバーガーなどにもよくある‘マヒマヒ’(Mahimahi)はハワイ語の魚でもっともポピュラーだと思うが、それをシイラという魚だということを知っている日本人はどれくらいいるのだろうか。

マウイ島ワイレアのリゾート・ホテルに‘Humuhumu-Nukunuku-a-pua’a’というシーフード・レストランがある。 オーシャンビューの広い敷地内の人口ラグーンには、カラフルなトロピカル・フィッシュが数多く泳ぎ回り、ラグーンの上には渡り廊下で結ばれたポリネシアン風のハレ(家)が点在し、とても雰囲気のある作りになっている。柱や手すりなどはハワイ原産のオヒアの木で作られているという。エントランスには大きな水槽があり、もちろんフムフムヌクヌクアプアアが出迎えてくれる。 メニューもハワイアン・フードを取り入れたパシフィック・リムで実に美味しい。フムフムヌクヌクアプアアを模った皿もディナーをいっそう惹きたてる。

マウイ産のシャンパンを飲みながらラグーンに映るサンセットを見る瞬間は、現実の世界から開放された様なひと時を過ごせる。マウイ島ワイレアに滞在する時に必ずこのレストランに予約を入れるのは、このひと時を味わいたいからなのだ。もちろん予約はいつもサンセット・タイムに合わせている。

明日はどこかのリーフにシュノーケルを持ってフムフムヌクヌクアプアアの愛嬌のある顔を見に行こうと思う。