コラムコラム

第6回 映画『ブルーハワイ』の旅

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今日は兵役でヨーロッパに行っていたチャド(エルビス・プレスリー)が除隊してハワイに帰ってくる日だ。恋人のマイリはホノルル空港に彼を迎えに行くためオープンカーを飛ばしている……。

そんな場面から始まる1961年に公開されたエルビス・プレスリー主演映画『ブルーハワイ』が大好きだ。といっても1961年の公開から20年以上の歳月が経ってから初めてビデオで見たわけだが、僕は今日までに繰り返し何度も見ている。この映画を見ていると、自分が知っていてなおかつ好きな場所のシーンが多く、ついその場面に主人公と自分を重ねて映し出してしまうほど親近感がわいてくる。もちろん何十年も前の風景だが、現在の風景と比較することで、古き良き時代のハワイに興味のある人にとって、『ブルーハワイ』はさまざまな視点から見て実に面白い映画だと思う。

まだ一方通行ではないカラカウア・アベニューを車で飛ばすマイリ。後ろにはモアナ・ホテルが見える。アラモアナ・ブルーバードでポリスにスピード違反を見つけられ、マジック・アイランド方向へ左折して車を止めた。後ろにはアラワイ・ハーバーが見えるが、一見、今と変わらない風景だ。

しかし、ホノルル空港は現在の風景とは全く異なり、タラップで降りてくるシーンはひと昔前の離島の空港のようだ。タラップの下でフラガールによるレイでの歓迎は、僕の中ではまさに古き良きハワイのイメージだ。 チャドの仲間のビーチ・ボーイ達がいるハナウマ・ベイは、パームツリーが美しい人の少ないビーチで、観光地化された現在とはまるで別の場所のような気がする。初めて映画を見たときはハナウマ・ベイだとは気付かなかったくらいだ。

タンタラスの丘は柵もなく芝生が美しい。丘から見渡すホノルルの風景はビルがほとんど無く、現在より街も空も広く感じられる。 現在のヒルトン・ハワイアン・ビレッジ・ホテルはハワイアン・ビレッジというホテル名で登場し、今は6つあるタワーが1つしかなく、ロビーもポリネシア風で、現在のホテルのイメージからは想像もできないくらい、のんびりと南国の雰囲気をかもし出している。

ノースショアのパイナップル畑の中まで車で乗り入れるシーンでは、周りを見回しても、どこまでもパイナップル畑が続いていて、のどかな様子は今と変わらない。

カウアイ島のシーンは、なんと言っても現在は閉鎖されている‘ココ・パームス・ホテル’だろう。チャドとマイリが‘ハワイアン・ウエディング・ソング’(Ke Kali Nei Au)を歌いながら船でホテル内のラグーンを渡り、チャペルで結婚式を挙げるラスト・シーンはあまりにも有名で、以降このブルーハワイアン・ウエディングは世界中のカップルの憧れとなったことは言うまでもない。

エルビス・プレスリーが歌う映画の主題歌‘ブルーハワイ’は実は1937年ビング・クロスビー主演の映画‘ワイキキ・ウエディング’の主題歌として既に世に出ていた歌だ。ビング・クロスビー自身が歌う‘ブルーハワイ’も、30年代当時の雰囲気が漂うシンプルなアレンジで、ロマンティックなワイキキの風景が思い浮かべられる。

もちろん‘ブルーハワイ’のサウンドトラック盤は、全曲エルビス・プレスリーの歌声が聴ける。スタンダード・ナンバーとなった‘好きにならずにいられない’(Can’t Help Falling in Love)を含めハワイアン・フィーリングたっぷりの名曲揃いだ。

僕は映画『ブルーハワイ』を見て半世紀前のハワイへの扉を開けて覗いているような気持ちになった。 映画で見た当時の風景を思い出しながら「ブルーハワイの旅」をするのもきっと楽しいと思う。