コラムコラム

第7回 僕が好きだった雑誌『ALOHA』

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ハワイ情報誌『ALOHA』ハワイの代表的な言葉‘アロハ’(ALOHA)。 この一言にはさまざまな意味があり、そしてもっとも奥の深い一言だ。僕たちツーリストが挨拶として気軽に使っている言葉だが、ハワイの人達の気持ち、感情などがこの‘アロハ’という一言には詰まっている。
このALOHAという文字(言葉)をハワイで見つけるのは容易だ。 ‘アロハ・タワー’、‘アロハ・エアライン’、‘アロハ・ガソリン’、‘アロハ豆腐’など、探していたらきりがないほど‘アロハ’という言葉は数多く使われている。

以前、僕がハワイを訪れるたびに必ず購入していた雑誌があった。タイトルもそのものズバリ『ALOHA』だ。サブタイトルは‘The Magazine of Hawai’i and Pacific’となっていて、ハワイとハワイに関わる太平洋周辺の情報誌だ。1978年から隔月の年6冊(78年は4冊)出版されていた。僕はいつも帰国する日に空港のマガジン・スタンドで『ALOHA』を購入し、帰りの飛行機の中で、まだまだハワイという空間に自分の身を置きたい気持ちで読んでいた。

この雑誌の一番の魅力はなんといっても写真が美しいことだ。広告なども全てローカルのものばかりで、観光地としてだけのハワイではなく、多民族社会のハワイの姿がこの1冊に凝縮されている。毎回記事には観光スポットはもちろん、ハワイ本来の自然や、文化、島の人達の生活などを紹介している。

表紙も写真をはじめハワイの絵画や古い広告、メニューカバーの絵などを使用しセンスの良いでき上がりになっている。年代順に並べてみると、そこにはハワイそのものが存在していた。僕は以前からこの雑誌でショップ、ギャラリー、ホテルなどの情報を得ていた。日本の旅行ガイドにはない自分好みの情報を多く集めることができたのだ。

しかし僕の好きだった雑誌『ALOHA』も数年前に姿を消してしまった。 現在は100年以上の歴史を持つハワイ最古のシティ・マガジン‘ホノルル・マガジン’や、内容が‘アロハ’と同じような形態の雑誌‘ハワイ・マガジン’が、僕にとっての『ALOHA』の代役になっている。

ホノルル・マガジン’は以前‘パラダイス・オブ・ザ・パシフィック’(Paradise of the Pacific)というタイトルで1888年から出版され、人気を得ていた。この雑誌に数多く掲載されている少し色あせたカラー写真は、僕を当時のハワイへと導いてくれる。今では1960年代以前に出版されたものが人気で、コレクターズ・アイテムとなり、高値で取引されている。

僕はアメリカ西海岸のアンティーク・ショップで様々な年代の‘パラダイス・オブ・ザ・パシフィック’を見つけたことがある。古い雑誌は、やはり“楽園ハワイ”というイメージを前面に打ち出していて、ハワイのイメージ作りに一役買っている、観光の島ならではのものだ。

70年代に起こった“ハワイアン・ルネッサンス”以降と、それ以前ではハワイに対しての捉え方が違ってきている。のどかな南の楽園の作られたイメージから本当のハワイの姿を捉えるようにと変化しているように思える。