コラムコラム

第14回 ハワイ生まれのビールたち

このエントリーをはてなブックマークに追加

メイド・イン・ハワイのビールでもっともポピュラーだったのはプリモ(Primo)だろう。ハワイの海をイメージさせる鮮やかな青い缶にカメハメハ大王とハワイ諸島の地図がデザインされ、ハワイ産のビールにふさわしい風格を持っている。

この青い缶は70年代から80年代にかけて見られたが、その後のプリモ・ビールはカリフォルニアで鋳造されるようになり、缶やビンのデザインも大幅に変わってしまった。90年代までABCストアーなどでまだ見かけていたが今では完全に姿を消した。

1991年公開の湘南を舞台にした日本映画『波の数だけ抱きしめて』は1982年という時代設定が僕にとって、とても親近感のある時代背景の映画だった。小道具としてプリモの青い缶が登場したという心憎い演出が好きだった。この映画を撮影した時は、すでに青い缶のプリモはなくなっていたので、どのようにして手に入れたのだろうと思っている。

プリモ・ビールの歴史は古く、1930年代には既にあったと聞く。アンテーィーク・ショップで30年代と50年代の古いプリモのビンを見たことがある。このプリモには、さまざまなノベルティー商品があり、今ではプリモ・グッズを収集しているコレクターも沢山いるということだ。僕も以前からプリモ・ビールのさまざまなノベルティーグッズを収集している一人。グッズにはかなりの種類があり、コースターやグラス以外にもアロハシャツ、時計、灰皿、靴べら、フリスビーまで挙げていたらきりがないほどだ。

めずらしいところでは提灯やシャンデリア風ランプなどもなかなか良い雰囲気を持っている。アロハシャツに関しては60年代から70年代にかけて柄やボタンなど細かいところも少しずつ変化している。近年は、プリモのアロハシャツのレプリカも出回っていて、かなり出来栄えの良いシャツに仕上がっているので、オリジナルと見分けがつきにくいほどだ。

90年代に入るとハワイの各島のスーパーで地ビールが売られているのが目立つようになってきた。どれもラベルがハワイらしくてそれぞれ個性を持った味をしている。ハワイ島コナの‘コナ・ブリューイング・カンパニー’(Kona Brewing Co.)は日本にも輸入されてハワイアン・レストランなどで飲むことが出来る。ヒロの‘メハナ・ブリューイング・カンパニー’(Mehana Brewing Co.)はツナミ(Tsunami)というヒロならではのネーミングのビールをつくっていて、有名レストラン‘ロイズ’(Roy’s)のプライベート・ビールも醸造している。

マウイ島の‘トレード・ウインズ・ブリューイング・カンパニー’(Trade Winds Brewing Co.)はハワイアン女性のイラストのラベルが印象的で、1995年からワイルク工場で醸造を始めた。僕はその中でもフラ・ベリー(Hula berry)のフルーティーな味のビールが好きだったが、最近このメーカーのビールをスーパーで見かけなくなってしまったのが残念だ。

いつ頃無くなってしまったのかはわからないが‘マウイ・ラガー’というフラガールのラベルのグリーンボトルのビールがあった。1993年までは見かけたのだが。僕がプリモの次に知ったハワイ産ビールで、マウイだけではなくワイキキでも売られていた。 今ではこの2つとも姿を消してしまったのが淋しい限りだ。ホテルのラナイで海を見ながら、いつも飲んでいたプリモの味も、少しフルーティーでライト感覚のビールということしか覚えていないが、ハワイの鮮やかな光の中にあったプリモの青い缶は、僕の目に今でもしっかりと焼きついている。