メイド・イン・パラダイスという洋書が90年代の終わりに出版された。‘Hollywood’s Films of Hawai’i and The South Seas’というサブタイトルがついていてハワイや南太平洋で撮影された映画やTVドラマ(また、ハワイや南海の海を舞台にしているがハリウッドのスタジオで撮影された映画など)が年代順に紹介されている。
古いものでは1923年から記載されていて、写真や当時のポスターも豊富に掲載され、撮影場所、出演者の記載もあり、資料としてもかなり貴重なものだ。ただ、写真がすべてモノクロなので美しい風景やカラフルな衣装がカラーで見ることができないのが少し残念だ。
この本に記載されている映画は最近の作品はもちろんのこと、1920年代のモノクロの作品まで、かなりの本数がビデオ化されていて、入手することも可能だ。古い作品はほとんど英語版だけだが、当時のメインランドの人々が、ハワイをどのように捉えていたのかがわかる映像が多いので見ているだけでも楽しい。
入手できるビデオの中でも特にお薦めなのが、1932年公開の「バード・オブ・パラダイス」だ。南海をテーマにしたこの時代のモノクロのハリウッド映画としては珍しく、スタジオセットではなくハワイで撮影されている。
映画を見るとオアフ島のワイアラエ・ビーチ(カハラ)のシーンは、ココヘッドが現在と変わらぬ姿で映し出されている。ハワイアンソングも登場するが、火山は‘ペレ’と呼び恐れられている。ルアウのシーンでは、どこかの国の部族かと思うような歌や踊りの場面が見られて面白い。この時代のハワイに対するイメージが凝縮されている映画だと思う。
映画の資料でもう1冊お薦めなのが「The KAUAI Movie Book」(洋書)だ。カウアイ島で撮影された映画が細かく解説されているガイドブックで、サーフィン映画や日本のテレビ・ドラマも掲載されているが、これほどの本数がカウアイ島で撮影されていたのかと驚かされた。
全ページカラーでカウアイ島の風景写真も美しい。僕はこの本の影響で訪れたい場所がまた増えてしまった。今では多くの映画のロケ地となっているカウアイ島は‘太平洋のハリウッド’と呼ばれ世界の注目を集めている。古くは1958年の「南太平洋」、「ブルーハワイ」から「インディー・ジョーンズ」、「ジュラシック・パーク」まで長年にわたって撮影が行われてきた。
その‘太平洋のハリウッド’と呼ばれているカウアイ島ならではのツアーがある。その名も‘ムービー・ツアー’だ。「南太平洋」のハナレイ湾、「6デイズ/7ナイツ」のハナマウル湾、「ジュラシック・パーク」のキプ・ランチなど、映画の中のシーンがに関連したカウアイ島の映画ロケ地を巡る。
そして、このツアーの呼びものは、1992年にカウアイ島を直撃したハリケーン、イニキの被害により、閉鎖されたままになっているエルビス・プレスリーの主演映画「ブルーハワイ」のロケ地‘ココ・パームス・ホテル’。このホテルは現在、閉鎖されていて、敷地内に入れるのは、ムービー・ツアーに参加した者のみで、参加者の特権となっている。
世界中のファンが再会を待つ‘ココ・パームス・ホテル’。僕も「ブルーハワイ」の各シーンが思い出される、美しいラグーンをもつホテルの再開を待ち望んでいる一人だ。ガーデン・アイランドと呼ばれているカウアイ島は、訪れた人達の心を惹きつけてやまない。
僕の日常生活の中では出会うことのないだろう、緑深く険しい山々が連なり山肌に無数の滝が流れ落ちているこの絵のような風景、そして白砂の美しいビーチと美しいダブル・レインボウは、僕にいつも感動を与えてくれた。この風景を見れば、この島が数多くの映画人を惹きつけ、 ‘太平洋のハリウッド’と呼ばれた理由がわかるはずだ。