ハワイアンアート ハワイの美しさに魅せられハワイの絵を描く人はプロ、アマ問わず沢山いる。僕もそのなかの一人なのだが、僕自身のようにハワイ以外の場所に住んでいる者もいれば、旅行などでハワイを訪れ、ハワイの美しさにすっかり魅了されてしまい、ハワイに移り住んだ人も多い。その想いは僕もよくわかる。
ハワイアン・アートの歴史は古くはキャプテン・クックがハワイを訪れた時代にさかのぼる。当時は、画家が航海に同乗し、航海の記録を精密な絵で描いていた。資料として残されているエッチングを見たことがあるが、それらの絵はハワイの原風景なのだろう。
1800年代後半に入ると、ハワイに旅行で訪れる人も多くなり、ハワイの風景を描いた油絵が数多く残されている。‘Honolulu Academy of Arts’(ホノルル美術館)のアート・オブ・ハワイのコーナーでは、1800年代後半から1900年代前半にかけてのものを、大航海時代のものはキャプテン・クックのコーナーで見ることができる。
これらのハワイアン・アートの歴史をまとめた1冊の画集『Finding Paradise』が2002年にホノルル美術館監修で出版された。350ページ、オール・カラーの豪華な画集だ。僕はその中の何枚かの絵から新作のインスピレーションを得ている。
1900年代に入ってハワイ観光がブームになり、観光者用のポスターやホテルのレストラン、豪華客船のディナー・メニュー、ハワイアン・ミュージックの楽譜の表紙などにハワイをイメージしたポップな絵が使われるようになった。そして1960年代、写真にその座を奪われるまで、数え切れないハワイを描いたイラスト(アート)が世に送り出されている。
僕は1940年代の豪華客船マトソン・ラインのメニューやバゲージ・タグなどさまざまなイラストを担当していた、フランク・マッキントッシュのポップでカラフルな絵が好きだ。自分が描きたかった‘楽園ハワイ’のイメージがそこにあるからだ。
マトソン・ラインで彼の後を担当した画家、ユージン・サベージはハワイの色々な風景や歴史を6枚の大きな油絵で仕上げた。その1枚をホノルルの「マリタイム・センター」で見たとき、その絵のあまりの精密さに圧倒されてしまった。
1980年代は、マリン・アートを描く画家が世界的に有名になった時期だ。マウイ島でザトウ鯨の保護と共にホエール・ウオッチングが盛んになり、鯨やイルカを描いたマリン・アートが人気を博し、ギャラリーが数多くあるラハイナでは、たくさんのマリン・アーティストが登場した。日本でもマリン・アートが受け入れられるようになって、マウイ発ハワイアン・アート、というものが世界に認識されていった。
近年、多様化したハワイアン・アートは、風景、植物、人物(特にフラガール)、マリン、サーフ・アートなど、その題材は実にさまざまだが、その根底にあるテーマはハワイの自然の美しさだ。
毎年冬にオアフ島のノースショアで開催される、サーフィンの世界大会「トリプル・クラウン」のポスターはとても人気があり、すぐに売り切れてしまう。ノースショアの波や風景を描いていて、立派なハワイアン・アートと呼べるだろう。このポスターを制作するのが僕の夢でもある。
これからどのようなハワイアン・アートを描いていくのか自分でも楽しみだ。