コラムコラム

第2回 30メートル望遠鏡(TMT)建設計画の内容

このエントリーをはてなブックマークに追加
TMT完成予想図

TMT完成予想図 (出典:国立天文台TMT推進室 HPより)

マウナケアは、ハワイの創世神話に基づくと、母なる大地、パパハーナウモクと、父なる空、ヴァーケアの最初の子供です。そんな神聖な山に建設が予定されている「30メートル望遠鏡(TMT)」。いったい何が30メートルなのかというと、望遠鏡の対物レンズ(目を当てる部分ではなく、望遠鏡の先端のガラス)の直径(口径)のことです。

 

日本はすでに、現在世界で最先端といわれる「すばる望遠鏡」をマウナケアに有しています。すばるはレンズ口径約8メートルの巨大望遠鏡です。このレンズの直径が次はなんと30メートルになるのですから、もちろん、大きな科学的な発見が期待されると同時に、さらに大きな施設が必要になります。予定では、総面積5~8エーカー(東京ドームの約7割)の土地に、地下2階、地上18階相当の大きさの施設が建つと言われています。もし建設がされれば、TMTはハワイ島で一番高い建物になるのです。

 

このTMT計画は、10年以上前にカリフォルニア工科大学で始まりました。当時、日本にはすばる望遠鏡に次ぐ、日本独自の「超大型望遠鏡(ELT)」計画もありましたが、最終的に、TMT計画に国際協力する決断をしました。2006年頃には日本の参加が決定され、2009年には建設予定地がハワイ島マウナケアに選定されました。

 

2013年には正式にTMTの建設が許可され、カナダ、中国、インドも加わり、計五か国による国際プロジェクトとなりました。総費用は1,500億円。その25%を日本が担い、望遠鏡の一番大事なレンズも日本の企業が作ることになりました。日本にとっては国をあげての大事業です。

 

しかし、2014年10月に予定されていた起工式は、多くの人が「神聖な土地への巨大科学施設建設」への反対運動を行ったために中止されました。その後もTMT建設反対運動は続き、4月のメリー・モナーク開催前には、ハワイ州知事によってついに一時的なTMT建設中断が指示されました。現在も建設は中断されたままですが、TMT建設側は、今後問題なく2021年完成を目標に建設を再開する、と発表しています。

 

次回は、ハワイの人にとってマウナケアが大切な理由を知るために、もう少し神話の世界をのぞいてみましょう。