コラムコラム

第3回 神話の中のマウナケア

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雪の女神、ポリアフが住むと言われているマウナケア。冬になると山肌は雪に覆われます。そのため、マウナケアは「雪の山(snow mountain)」もしくは「白い山(white mountain)」と翻訳されることもあります。実際、マウナ(Mauna)は「山」、ケア(Kea)は「白」という意味を持つハワイ語です。しかし、なんとこれはニックネーム!正しい「マウナケア」の翻訳は、「ヴァーケアの山(mountain of Wakea)」です。

Mauna Kea_Mauna Loa

雪に覆われたマウナケアとマウナロア(手前) Photo: Kuni Nakai

 

そもそも、マウナケアとは「マウナ・ア・ヴァーケア(Mauna a Wakea)」が短くなった略称なのです。では、ヴァーケアとは?これは、ハワイの神々の一人であり、全ての生命の父なる空、ヴァーケア(sky father, Wakea)のことです。

 

ハワイの創世神話に基づくと、ハワイ諸島はヴァーケアと2人の女神によって創られました。その中でも最初に創られたのがハワイ島です。そして、ヴァーケアと妻であり母なる大地の女神、パパハーナウモク(earth mother, Papahanaumoku)との間に最初に生まれたのが、マウナ・ア・ヴァーケアなのです。そのため、ハワイの人々はマウナケアのことを、最初に創られた島に生まれた最初の子供、つまり、最も大切にされるべきクプナ(年長者)と考えるのです。

 

ヴァーケアはパパハーナウモクや他の女神と、たくさんの「生命」を生み出してきました。その一つが「ハーロア(Haloa)」という名前を持った人間の祖先です。ハーロアはタロイモの一種でもあります。タロイモはハワイの人々の命を支える大切な主食です。つまり、ハワイの土地から生まれたハーロアは、その後同じようにハワイの土地に生まれた人々の生命を支えると同時に、彼らと直接結びついた先祖になるのです。

 

ハワイ諸島も、ハーロアも、そしてマウナケアも、みな父親はヴァーケアです。つまり、ハワイに生まれ育った人々にとって、マウナケアは「親族」であると考えられるのです。ですから、今回のTMT建設計画も、ハワイの人にとっては「他人事」とは言えません。開発に立ち向かう人の心には、きっと、「大切な御先祖様を守りたい」という気持ちがあるのでしょう。