
Photo: Kaori Mitani
マウナケアは、父なる空のヴァーケアと、母なる大地のパパハーナウモクから生まれた山です。標高4000メートルを超えて空高くそびえる山は、まるで神話を証明するように大地と空を結ぶ、象徴的な存在に見えます。そんな神聖なマウナケアには、ヘイアウ(heiau)などの歴史的に重要な史跡が多く存在しています。TMT建設に関連した2010年の考古学調査の報告では、山頂付近だけでも、141個のヘイアウ跡を含む、263個の史跡が確認されたそうです。また、史跡に加えて多くの埋葬跡も確認されており、現在もマウナケアに特別な思いを持つ人々が遺灰を納めに来る場所もあるそうです。
クムフラであり、研究者でもあるプアラニ・カナカオレ・カナヘレ(Pualani Kanaka‘ole Kanahele、ハラウ・オ・ケクヒの前クムフラ)によると、マウナケアは神々の時代からいつもそこに存在し、人々を見守り続けている、まさに、すべての人にとっての「クプナ(kupuna)」であるそうです。「クプナ」という言葉は、「年長者、お年寄り」など、人を指して使われることが多いのですが、ハワイの人が「山」であるマウナケアのことも「クプナ」と呼ぶのは、子供がおじいちゃんやおばあちゃんに抱くような、愛おしさや安心感に似た気持ちをマウナケアに持っているからなのでしょう。マウナケアは見た目にも美しく、神々しく神聖であり、そして同時に、今も昔も人々の心にとても近く寄り添っています。
この思いは、生まれた場所や育った環境が違う私たち日本人でも、共感を持てる感覚ではないでしょうか。私たちが今ここにいるのは、その先にずっとつながっている年長者たちの存在があるからです。そんな大切な人たちが大切にしていた場所を守りたいという気持ちは、決して特異なものではなく、ある意味、人としてとても自然な、素直な感情のように思います。
TMTの建設反対を訴えるためにマウナケアに集まる人々は、ただプラカードを掲げて反対を叫ぶだけではなく、フラをしたり、チャントを唱えたりもしています。次回は、「フラとマウナケアを守ること」の関係について考えてみたいと思います。
<参考>
http://welivemana.com/articles/sacredness-mauna-kea-explained