コラムコラム

第5回マウナケアでフラやチャントを捧げる理由

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今もまだ、30メートル望遠鏡(TMT)の建設は中断されています。そして、ついに、約1週間前に、ハワイ最高裁判所は抗議団体の主張を受け、「TMT建設の妥当性」を再検討する事を発表しました。TMTプロジェクト側は、最高裁による再びの許可によってようやくスムースに建設が進められる、と強気でいますが、見方によれば、一度法的に許可されたこれだけ大きなプロジェクトが再検討されるということは、反対運動の声が、確実にマウナケアを通じて社会に影響を与えているということでしょう。

第5回 祈り

Photo: Pua Case

マウナケアに集まる人々は、様々な言語で書かれたプラカードを掲げ、建設反対を訴えます。しかし、それだけではなく、山頂に向かってフラを踊ったり、チャントを捧げたりもします。これはいったいなぜでしょうか。

 

元来、フラやチャントは、シチュエーションや目的に最も適したものが選曲され、演じられていました。神々やそれに関わる事物を対象とする神聖な場面では、膝を曲げ、体の重心を低くし、神聖な大地により近づく姿勢が必要とされました。大地は神そのものであり、また、そこには先祖や神々が眠っています。大地に根付いたフラを行うことは、非常に神聖なエネルギーに満ち溢れ、結果的にそのエネルギーがその土地に、環境に、還元されます。つまり、適したフラを正しく行うえば、その環境のエネルギーを高めることになります。

 

また、ハワイの伝統的な考えでは、人の「声」は何よりも貴重な捧げもの・贈り物であるとされます。声は体の中から生命の息吹を伴って発せられるものであり、また、形がないために、儚さも兼ね備えています。二度と再現されることのないこの瞬間に、世界にたった一つの声でチャントを捧げる。これは、最も神聖であり、崇高な行為です。

 

反対運動の「声」が裁判所に聞き入れられたのは、マウナケア全体のエネルギーが世界中から集まる「声」によって高まっているからかもしれません。